『プラドで正面衝突事故。自動運転のテスラが特攻してきた。』ちょっと待って、それ本当に自動運転!?~テスラの本当の自動運転ソフトとは?~
YouTubeのテスラ動画でバズってたので紹介します。
交差点での事故ですが、テスラを運転していた方は自動運転オートパイロット(以降APと省略)を使用していたそうです。ただし、居眠り状態で使用していたようです。
自動運転のレベル2なので、居眠りの状態で使用することは禁止されてます。
ただ、テスラの自動運転の実力がこれなの?との意見はあると思いますが、実はテスラの自動運転ソフトにAPとフルセルフドライビング(以降FSDと省略)の2種類あるのはご存知でしょうか?
APとFSDの概要
APソフトは、販売当初から日本含めすべてのテスラ車に標準で搭載されています。
しかし、実はこのAPは自動運転ができないと判断された、言うなら失敗作なんです。(詳細は後ほど説明します)
ただ、レベル2の運転支援としては十分に活用できるものとして現在も使用されています。
一方、2020年頃に将来的な自動運転を目指すことができるソフトとして登場したのが、このFSDソフトです。
見てわかるように、交差点など様々なシーンも自立して運転できています。※ただし、ベータ版のソフトであり、レベル2のため全てのシーンで自動で運転できるわけではありません
FSDソフトはアメリカなど一部の地域で、かつテスラ独自で用意している安全スコア判定で高得点を出しているユーザのみに配布されています。(その際FSDオプションに加入する必要があります)
したがって、現段階で日本で配布されているソフトはすべてAPになります。
APとFSDの機能の違い
まず、APには下記機能が備わっています
• レーンアシスト
• 衝突回避アシスト
• スピードアシスト
• オートハイビーム
• 標識速度維持機能
• 自動車線変更(FSDオプション加入者)
• オートパーキング・スマートサモン(FSDオプション加入者、一部日本未導入)
• 赤信号と一時停止標識の表示
• 信号機と一時停止標識の発進停止・警報(日本未導入)
※FSDオプションは、あくまで追加オプション名でFSDソフトとはまた別物になります(すごくややこしい)。
ただし、このオプション加入で将来的にFSDソフトにアップデートできることを保証しています。
APでも色々な機能が含まれていますが、FSDでは更に下記機能が追加されると思ってください。
• 交差点での自動右左折
• 最適なタイミングで車線変更や右左折の実行
• 狭い道や急カーブでの最適な走行ルート/位置取り
• 譲り合いなど周辺車両/歩行者の動きをみた最適な走行
大前提としてFSDソフトは目的地を設定すると使用できるため、その目的地移動までの最適な走行を自ら計算し自動で運転します。
APとFSDの認識の違い
APとFSDのヴィジュアライズ(視覚化)画面を見て頂きたいと思います
AP画面の例(僕テス動画から引用https://youtu.be/KNjoykzM7Ro)
真ん中の切り抜き画面の右側に映っているのが、視覚化された画面です。
APでどの範囲のものを認識しているかがわかります。※全て認識したものを表示しているとは限りませんのでご承知を。
まず前方車両を捉えていることがわかります。
また自車線の位置も捉えていることがわかります。
しかし、対向車線にいる停止車両や、遠くの路肩に停まっている車両は検知できていないことがわかると思います。(路肩の車両はもう少し接近すると表示されます)
また、自車線程度しか理解できていないので、中央線の位置等が認識できていません。
FSD画面の例(Dirty Tesla動画から引用https://youtu.be/Ov9CyWruoXA)
切り抜き画面の左側がFSDの画面ですが、見てわかるようにまず表示範囲が違います。
交差点の全体の道路も認識することができています。
また、対向車線にいる停止車両や通行車両・右折道路にいる停止車両まで、かなりの数の車両を認識できていることがわかります。
他にも、中央線や横断歩道も認識できているのがわかります。
FSDが作られた理由
そもそも、テスラはAPソフトで自動運転を目指していました。
このAPソフトは、まだ運転支援がほとんど普及していない頃、モービルアイ社のソフトをベースに作られたと言われています。
しかし、2018年頃にテスラのある社員が「このソフトでは自動運転はできない」と端を発し、その後1から新しくソフトを作り直し、FSDが完成しました。
このことは、テスラ元社員であるバート・チグサさんの動画でも紹介されています。
APのベースソフトがどのようになっているか詳細は分かりませんが、実力を見る限り、高速道路での自動運転ができることを前提に作られたベースソフトだったと予想します。
高速道路上では自車とその隣接車線、前方・後方にいる走行車両は認識する必要がありますが、きっちり区切られた対向車線側は認識する必要がありませんし、路肩に停車しているようなシーンをあまり考慮する必要がありません。
当時の処理能力等を考えると、上記がAPの認識限界になっていると思われます。
ただ、このことから一般道でも自動運転をやろうとすると、APでは不可能であることが容易にわかるかと思います。
最後に
テスラの自動運転ソフトの違いを解説しましたが、FSDはまだベータソフトであり、レベル2のままです。
FSDも時折、対向車を見失うシーンなどがあり、100%自動で目的地まで運転するにはまだまだ時間がかかりそうです。
しかし、レベル2でもFSDをいち早く体験したいというユーザーが多くいるのが現状です。
その理由として、自動運転は楽をしたり、別の作業ができることが利点として挙げられますが、テスラは「新しい体験」というエンタメ的な要素で、自動運転を売り出しているからだと思います。
実験段階のソフトで、当然予期せぬ動作が起こりうる可能性は十分にありますが、ユーザはそれを承知で楽しみたいと考えており、テスラは生活に必要な移動手段ではなく、まさしく「走るスマホ」と表現すべきものだと、自動運転からも読み取ることができます。